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福島県の北部に位置する川俣町。ファッションブランド「L’ANIT」(ラニット)代表の高橋彩水さんは、東京からUターンして川俣町からオリジナルのニット製品を発信している。シリーズ初の女性ということで、どんなRethinkがあるのかワクワクしながら駆けつけた、ノグチくんとバンダイさん。浮かれてないですか??

ラニットオフィシャルサイト(https://lanit.jp
ペーニャオフィシャルInstagram(@pena.kawamata

ファッションはコミュニケーションツール

photo by 嶌村吉祥丸 写真集「nice to meet you」より

ノグチ
寒くなってきたよな、本格的に。
バンダイ
わかるよ、ノグチくんが次に言うこと。
「温もりが欲しい」でしょ?
ノグチ
その通り!寒いとノグチは震えちゃいますっ!
バンダイ
寒いと震えるのは、誰でもそうだけどね・・・。
でも今日はそんなノグチくんにぴったり。ニットの取材です!
しかもシリーズ初の女性からお話を聞けるよ!
ノグチ
ええっ!・・・「女性」しか頭に入ってこなかったけど、何の取材?
バンダイ
ニット!ほら、いらっしゃいました。
高橋
はじめまして。ラニット代表の高橋彩水です。
ノグチ
よろしくお願いします。
早速ですが、寒さに震える僕のために手編みのマフラーを編んできてませんか?
昨日夜中までがんばったやつです、ありがとう!
高橋
あははっ!すみません、マフラーとか編んだことないんですよ。
ノグチ
え?ニットのプロが、マフラーを編んでいない?
あっ!そうですか、手袋ですか、ありがとう!
高橋
昔、手編みをしてたらマフラーの形がどんどん変わっちゃうような感じで。(笑)
手編みのプレゼントとかしたことないんです。うちの製品でよければぜひ。
ノグチ
・・・では、お支払いはバンダイから。
バンダイ
ちょっと!でも、今では手編みで製品づくりされてるんですよね?
高橋
はい、今は手編みと機械編みを組み合わせて作っています。
手間がかかるので普通はやらないんですけど、それで独特の味わいが出るんです。
バンダイ
なるほど、個性を出すためにですか。大変そうだなぁ。
そもそもどういうものをニットって呼ぶんですか?
高橋
「セーターのことでしょ」って言う方もいますが、本当の意味では組織のことなんです。
ノグチ
組織?悪の?
バンダイ
(子どもか・・・)
高橋
縦と横で糸が交差するものを織物。それに対して、一本の糸で編んでいくのがニットです。

糸の組み合わせによってバリエーションは無限に。

ノグチ
あぁ、そういう製法からくる組織の名前なんですね。
・・・じゃあ、中島みゆきさんの名曲は?
高橋
あれはニットでなく織物のことですね。
ノグチ
おおっ、意図せず聞けた名曲の秘密!
あの・・・今のは意図と糸がですね・・・
バンダイ
(我慢できないノグチくん・・・)
高橋さんのブランド「L’ANIT」(ラニット)とはどういう意味なんでしょう。
高橋
フランス語で友達を意味する「L’AMI」(ラミ)と「ニット」を組み合わせた造語です。
バンダイ
ニットから生まれる人とのつながりも表現されてるんですね。
高橋
はい。ファッションはコミュニケーションツールだと思うんですよね。
ノグチ
そうか!糸を紡ぐものでもあり、
高橋
人と人を紡ぐものでもあると思います。
バンダイ
(ちょっと紡がれた2人・・・もしかしてここからなんかある?)

ラニット村に行ってみた!

バンダイ
高橋さんは東京でブランドを立ち上げて、川俣にUターンしてきたんですよね?
とても行動力を感じますが、ご自身でも行動派だと思いますか?
高橋
川俣にも、仕事の上ではなんの繋がりもなくUターンしてきたんですが、どうなるかわからないことに飛び込んでいくのが好きなんですよね。想像通りはつまらないというか。
去年はフィリピンのパナイ島というところにラニット村という村があることを知って、行ってみたんですよ。
ノグチ
え?何のつながりもなく、ラニットという名前だけで??
高橋
はい、何のつながりもなく、ひとりで。
ノグチ
ひとりで??
高橋
調べてみたらラニット村には「ニト」という編み物の素材があって、住民の皆さんがカバンをつくっていたんです。偶然ですけど、私はカバンの取手だけつくっていて、これは引き合わせだと思って、ひとりで行っちゃいました。
バンダイ
驚かれたんじゃないですか?
高橋
現地の方には、ほんとに「ラニット」という名前だけで来たの!って。(笑)
人と人が出会って何か生まれるのが楽しいんです。

ラニット村の子どもたちに編み方を教える高橋さん

ノグチ
すごい行動力!!
日本でも、歩いている人に突然ニットを着てもらって写真撮影をしてると伺いましたけど、それをやってしまう理由がわかった気がします。
高橋
ファッションスタイリストとカメラマンとのコラボレーションプロジェクトなんですが、一緒に街で話しかけたおじちゃん、おばちゃんにニットを着てもらって撮影してますね。私のニットは売るだけでなく、着て楽しいものにしたいし、会話のツールにしてもらえるんじゃないかと思って。

突然のお願いで身につけたとは思えないほど楽しそうな人々。

バンダイ
あぁ、なんだか根っこにある思いを感じます。
ほかにもペーニャというイベントもつくられているとか?
ノグチ
ペーニャ?あぁフランス語ね。
高橋
スペイン語ですね。(笑)
パフォーマーと観客とか、売り手と買い手とか、そういう線引きをなくしてみんな入り混じる交流会、お祭りのようなものです。その場で出会った人同士が偶然生み出すもの面白くて。そこでもスタイリストさんとコラボレーションしてニットを着てもらったりしています。

川俣町でのイベント「ペーニャ」で記念撮影。この多様性が楽しいんですね。

ノグチ
イベントお好きなんですか?・・・僕も好きです。
あ、今の好きというのはそういう意味じゃなくて・・・。
バンダイ
 (なに、その照れ。)
高橋
イベントが好きというか、交流が好きなんだと思います。
ファッションと一緒で、組み合わせから新しい価値を生むところとか。
糸と糸が紡がれたり、時に絡まったりもしながら、どうやったらうまくいくかを考えるのは、人と人でも一緒で。そこが好きです。
ノグチ
バンダイ、褒めてくれ。
今「好きです」しか頭に入ってこなくなりそうなのを、なんとか食い止めた。
バンダイ
褒めるどころか、けなしたいくらいだけど、
高橋さんのことがわかってきたみたいでよかった。

川俣だからこそ生まれる発想

バンダイ
高橋さんのつくるニットって、川俣のような自然豊かなところで着るには鮮やかで、勇気がいるようなデザインが多い気がするんですが。

福島県北部に位置する川俣町。

こののどかな街に・・・。

このニット!!

高橋
私も最初はそう思ったんですけど、まったくそんなことはなくて。
バンダイ
え?地元の年配の方とかも着たりするんですか?
高橋
そうなんです。若い人にしか受け入れられないかなと思っていたんですが、見せてみるとおじいちゃんおばあちゃんが面白がって着てくれたりしますね。作業着と組み合わせたりして。
ファッションを決めるのは場所ではなく、その人の感性なんだと気づかされました。
ノグチ
作業着とニット!?

作業着とニット、と笑顔!!
photo by 嶌村吉祥丸 写真集「nice to meet you」より

高橋
そういう組み合わせの発想は東京では絶対に得られないものです。しかもそれがご近所のお友達とかに広まっていく。そんな川俣のコミュニティもクリエイティブのヒントになります。
バンダイ
この場所はむしろエネルギーの源ですか?
高橋
そうですね。デザイン面で、自分のいる場所はプラスになってもマイナスにはなりませんね。
私の発想のもとになるレトロなもの、昔のものがここには溢れています。
住んでいると都会に対する反骨精神みたいなものも湧いてきますし。(笑)
ノグチ
おお、ギラつく川俣の一匹狼!
高橋
いえ、一匹狼じゃないですよ。
一見華やかに見えるプロジェクトや商品づくりの背景には、一緒になって大変な土台づくりをしてくれる人達がいます。人の状況もどんどん変わるのでいつも同じメンバーで作り上げられるわけではないからこそ、一つ一つ責任を持ってカタチに残し続けていきたい、という思いが私の原動力です。
ノグチ
聞いたかバンダイ!一匹狼じゃないんだぞっ!
バンダイ
(僕、何も言ってないのに・・・。)
ノグチ
高橋さんには仲間がたくさんいるんだよ。
高橋
仲間というと、頭の中にもいて。
ノグチ
はい?
高橋
私がもともとデザインを考えるとき、まず自分の頭の中にいる人に着せてみるんです。
ノグチ
頭の中にいる・・・人ですか??
高橋
はい。その人が着るイメージから、だんだんと実際に着る人の気持ちとか、イメージを膨らませていくんですよ。
バンダイ
(不思議なことをおっしゃるけど・・・こういう人がデザイナーなんだなぁ。)
ノグチ
もしかして、その頭の中の人の名前って「ノグチ」じゃないですか?
今日その人が現実になって現れた!
高橋
あっ!
ノグチ
おおっ、やっぱり!えーっと、運命ってフランス語で何て言うんでしたっけ?
高橋
あはは、私フランス語さっぱりわかんないんですよ。(笑)
ノグチ
高橋さん、ここは初めて手編みのマフラーを編むチャンスだったんですよ・・・?
高橋
すみません、代わりにうちの新作ニットいかがですか?
ノグチ
わかりました。では、お支払いはバンダイから。
バンダイ
ちょっと!

高橋さんのRethink

Rethink Point

「ファッションは都会でつくるもの」→「都会では発想できないファッション」

「クリエイティブを生むコミュニュケーション」

そのほかの 福島のRethinkな人たち

  • ~福島フェス実行委員 藤原カズヒロさん~

    「福島から東京へ発信する」→「東京に福島をつくって発信する」

    「自分たちだからつくれるものを続ける」

    東京に福島を持ってくる

    震災後、2013年に東京の代々木公園でスタートした「福島フェス」というイベントがある。2014年に会場を港区六本木ヒルズアリーナに移し、現在も続くこのフェスをつくっているのが福島フェス実行委員会。今回は実行委員の藤原カズヒロさんに「なぜ東京で福島のフェスをやるのか?」というお話を伺うノグチくんとバンダイさん。福島という単語がこんなにも登場するのか!というシリーズ最終回。

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  • ~ミュージシャン 大友良英さん~

    「わらじまつりをどうしたいか」→「福島をどうしたいか」

    「祭りは自ら街を伝える舞台」

    誇りある21世紀の祭りを福島に

    ノイズミュージックからジャズ、ポップス、映画音楽、そして近年ではNHKの朝ドラ「あまちゃん」や大河ドラマ「いだてん」の音楽でも知られる大友良英さんは、横浜市生まれのミュージシャン。10代を福島市で過ごした大友さんは、震災後に福島市の「わらじまつり」改革に取り組みました。祭りとそこにある音楽をRethinkした大友さんにノグチくんとバンダイさんがお話を伺いました!

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    「直接の手助け」→「自立の場をつくる」

    「HelpでなくMakeで生まれる未来」

    HelpでなくMakeするステージを

    TOKYO NO.1 SOUL SETや渡辺俊美&THE ZOOT16、猪苗代湖ズでも活躍する渡辺俊美さんは福島県川内村出身のミュージシャン。震災後、現地でのさまざまな活動からふるさとをどう見つめ、どうRethinkしてきたのか。ノグチくんとバンダイさんが俊美さんの思いを伺ってきました。

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