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福島県の伝統工芸品「会津漆器」にユニバーサルデザインを取り入れ、持ちやすくオシャレな「楽膳椀」を生み出したのが楽膳代表の大竹愛希さん。障害者の意見、複数の職人さんの技術をいかにして組み合わせ、Rethinkしたのか。秋晴れの福島でノグチくんとバンダイさんがお話を伺いました。

介護用品でなく楽で自然なお椀

ノグチ
聞いだぞバンダイ!今回も女性にインタビューだって?
バンダイ
そう、楽膳というお椀をデザインした大竹愛希さんにお話を伺うよ。
ノグチ
愛希と書いて「あき」というお名前。素敵!
「食欲の秋でもなく、スポーツの秋でもなく『ノグチのあき』になってくれませんか?」
こんなのどう?
バンダイ
・・・絶対に言わない方がいいよ。
ノグチ
そうか、いきなりすぎるか。まぁ段階ってのがあるもんな。
バンダイ
そういう話でもないんだけど。あっ!いらっしゃったよ。
大竹
大竹です、よろしくお願いします。
ノグチ
あきさ・・・!いや、最初だし・・・大竹さん!よろしくお願いします。
バンダイ
楽膳椀、底の部分の形が特徴的ですよね?これは持ちやすくしているんですか?
大竹
はい。この楽膳椀は障害者の方に実際に使っていただいて、その意見を取り入れながら作っています。持つ力が弱くなったご高齢の方や、小さなお子さんにも使いやすくなっていると思います。

底の部分に切り込みがあることで、指を通しやすくなっているのが特徴。

ご高齢の方だけでなく、お子様へのプレゼントにも喜ばれるそう。

バンダイ
いわゆる「ユニバーサルデザイン」というものですか?
大竹
そうですね。ユニバーサルデザインは、国籍や民族、性別、能力などを問わずに誰もが使いやすいデザインという考えになります。楽膳では、障害者の意見を取り入れながら、誰でも食事をたのしく、らくちんにできるようなお椀を作っています。
ノグチ
たのしく、らくちんな食事が「楽膳」という会社の名前につながるわけですね!
大竹
正解です!
ノグチ
やった!何ポイントもらえますか?50ポイントで下のお名前を呼べるようになりますか?
大竹
わっ!
ノグチ
どうしました!?
大竹
すみません、虫が飛んできて。なにかおっしゃいました?
ノグチ
いえ、大したことは。
バンダイ
(すごい奇跡・・・、いやワザと?あぁ、無視の技か?!)
大竹
楽膳椀は使いやすさに加えて、本物の漆器を使うことによって、食事をより楽しんでもらえるようになっています。福島県には会津漆器という伝統工芸がありますし、本物の漆器は長持ちするので一生ものとして使えるんですよ。
バンダイ
一生ものですか!高価だと思っていたけど、長持ちすると思うとまた捉え方が違ってきます。
大竹
あとは何より食事を自然に楽しんでもらいたいと思ったんです。
ユニバーサルデザインというと、持ちやすさからマグカップみたいな取手をつけたりするものも多かったんです。でもそれだとお味噌汁を飲むときに、ずっと慣れ親しんだ持ち方とは違ってしまいます。そうならないように、楽で自然で美しいデザインを目指しました。

伝統を取り入れつつ、時代にマッチさせるのが大竹さんのデザイン。

ノグチ
本当に見ていて美しいです!
あ、今のはあくまで楽膳椀に対して言ったことで、勘違い・・・してもらっても僕は構いません。
大竹
わっ!また虫が!
ノグチ
バンダイ、虫除けスプレー買ってきて!

デニムと漆器の共通点

バンダイ
楽膳椀の他にも、ぐいのみがあったりお箸があったりバリエーションも増えてきたんですね。
大竹
楽膳椀を作ってみて、そこからさらにご意見をいただくことも増えてきましたので、それを活かして増えてきた部分もあります。お子さんの手に合うようなサイズの楽膳椀はプレゼントにも喜んでいただいています。
ノグチ
そんな中で目を引くのがデニムのお椀!これはかっこいい!
デニムお好きなんですか?僕は好きです。あ、今の好きは・・・。
大竹
デニム椀は「布着せ」という昔ながらの漆器の技法を使って生まれたんです。
バンダイ
(虫は苦手でも、無視は苦手じゃなさそうな・・・。)

こちらが楽膳椀の持ちやすさにデニム風のデザインが施された「デニムなうるし」

大竹
実は、漆器の良さを伝えるときに、ずっと「デニム」のお話をしていたんです。
ノグチ
共通点があるということですか?
大竹
はい。「漆器のデザインも好きだし、使ってみたいんだけど、高価なものをすぐに傷つけてしまうのが怖くて買うのをためらってしまう」というお声を、お客様から本当にたくさんいただいていたんですね。
ノグチ
そこでデニムのお話を?
大竹
デニムは使っていくと色落ちしたりダメージができたり、その人の使い方で味わいが出るし、長く使えるものですよね。
ノグチ
確かに!
大竹
漆器もそうだと思うんです。使っていくうちについていく傷も味わいになるし、長く使えるものですし。
そんなお話をしているうちに「布着せ」という技法を知って、これを使ってデニム風のお椀を作れば、言葉でなく実際に物として伝えられると思いました。

大竹さんの思いが書かれたデニムを発見!

「これならデニム椀が作れる!」と思った「布着せ」という技法。これが・・・。

こうなる!!

バンダイ
青い色も他のお椀と違っていいですよね。
大竹
そうなんですよ。3層塗りをしているんですが、長く使っていくと下の層が少しだけ見えてきて個性が出てきます。洋風の食事にも合わせやすいと思います。
ノグチ
自分で育てるお椀だ!
大竹
そういう楽しみもありますね。
ノグチ
一緒に使いたい、育てたい人がいるので2つください!大竹さん、1つ差し上げます。
大竹
私はもう毎日使ってますので。(笑)

飛び込むと見つかる視点

バンダイ
大竹さんはデザインのお仕事をされていますが、漆器のことにも詳しかったんですか?どうやって楽膳椀を思いついたんでしょうか。
大竹
いえ、漆器のことは何も知らずに職人さんのところへ飛び込んだんです。
ノグチ
え?
大竹
漆でものづくりをしたい!という思いだけです。
ノグチ
それだけで職人さんのもとに?
大竹
はい、紹介していただいて。(笑)
でも、教えていただくと、漆はこれからの時代とマッチするものに思えたんです。
バンダイ
伝統工芸が、これからの時代に?
大竹
漆器は自然の素材だけでつくるエコなものでもあるんですよね。
ノグチ
あぁ、プラスチックとか化学的なものとは対照的です。
大竹
温暖化やゴミの問題、環境破壊などが話題になる時代に、こんなに自然で美しいものがあるのならば、それを使ってデザインをしたいと思いました。そして何より職人さんのお仕事はかっこいいんです!

漆塗り職人、木内さんの作業。プロフェッショナル!

ノグチ
・・・私、職人になります!
大竹
私の思いを職人さんたちが聞いてくれて、手を動かしてくれて楽膳椀は出来上がったんです。
バンダイ
伝統の世界ですよね。職人さんたち最初はどんな反応だったんですか?
大竹
ろくろで木を挽く職人さんと塗りの職人さんと、工程が多い商品なので3ヶ月くらいかかってしまうんです。時間がかかるお願いをするわけなので「これ、売れんのかい?」「ちゃんと考えあんのかい?」とか疑問も多かったみたいです。(笑)
バンダイ
それを「漆で作りたいんです!」という強い思いで動かしていったんですね。
大竹
私のデザインを形にするには木の素材で、漆を塗ってというのが必要だと思っていたので。
バンダイ
漆器の世界は知らないけど?(笑)
大竹
全く知らないけど。(笑)

職人、木内さんの雰囲気ある工房。ここに飛び込むのは勇気がいりそうですが、扉を開けると・・・。

知らない世界が待っていて、広がるアイディア、生まれる視点!

ノグチ
おいバンダイ!なんか通じ合ってる感じずるいぞ!
大竹
思いを持って行動してみたら、知らなかった世界の人たちが協力してくださって、そこから新しい視点をもらった感じです。そのおかげで、楽膳椀やデニム椀、いろんな商品が生まれました。
バンダイ
そしてそれを受け取るお客さんからの声が、また新しいものを生むんですね。
大竹
知らなくても、飛び込んでよかったです。
デザインする前の私自身も知らないような商品ができたと思います。

こうして生まれた楽膳椀は、グッドデザイン賞(2014)を受賞!

バンダイ
知らないから職人さんのところに無茶なお願いができたのかもしれませんね。
大竹
怖いもの知らずだったかもしれません。
ノグチ
大竹さん、飛び込んできてください。僕のもとにいつでも!
大竹
わっ!
ノグチ
・・・うぅ、バンダイ、虫除けスプレーは??

大竹さんのRethink

Rethink Point

「知らない世界のものづくり」→「自由な発想からのものづくり」

「伝統と時代をマッチさせる思い」

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