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福島県南会津郡只見町。冬には豪雪地帯となるこの町に「ねっか」はある。日本で一番小さな蒸留所としてスタートしてから4年。こだわりの米焼酎をつくる脇坂さんは、なんと子どもたちに焼酎づくりの場を提供しているということで、今回はちょっと心配になりながらノグチくんとバンダイさんが駆けつけました。

ねっかさすけねぇ!

「ねっか」のある福島県南会津郡只見町

ノグチ
なぁ、バンダイ恋って知ってるか?
バンダイ
深いね、いきなり。一応辞書的な意味では知ってるよ。
ノグチ
本質は知らないわけだな?
バンダイ
まぁ、僕も経験はそんなに・・・そういうノグチくんだって・・・。
ノグチ
安心しろバンダイ。恋はな、人以外でも経験できることがわかった。
今回お話を伺う、ねっかの脇坂さんは焼酎に恋してるらしい。
バンダイ
それは表現の妙というか、意味が・・・。
ノグチ
俺にはわかる!脇坂さんは、絶対濃い焼酎を飲むタイプだ、と。
バンダイ
あぁ、それが言いたかったのね。恋と濃・・・。
ノグチ
いらっしゃったぞ!!
脇坂
よろしくお願いします。只見町で米焼酎をつくっている、ねっかの脇坂です。
ノグチ
よろしくお願いします。(あぁ、表情に恋してるのが出ちゃってる気がする。)
あの、いつから米焼酎に恋してるんですか?
脇坂
恋?あぁ、ねっかを設立したのは2016年の7月です。
ノグチ
丸4年も片思いを・・・。その恋覚めませんか?
バンダイ
(・・・片思い前提なのは、ノグチくんの経験からか。)
脇坂
覚めませんね。(笑)
飲みすぎた次の日はちょっとお酒の匂いが嫌になりますけど。

酒づくりを仕事にして辛いことは「どんな二日酔いの朝でもお酒の匂いを嗅がなくてはならないこと(笑)」とおっしゃっていました

バンダイ
会社名の「ねっか」ってどういう意味なんですか?
脇坂
福島には「さすけねぇ」という方言があると思うんですが、この奥会津地方にはその最上級である「ねっかさすけねぇ」という言葉があるんです。
バンダイ
「さすけねぇ」は問題ない、大丈夫って意味だから・・・。
脇坂
「ねっかさすけねぇ」は全然大丈夫ということですね。
ノグチ
おお、強い!ねっかノープロブレム!ねっかモウマンタイ!
脇坂
そんな感じです。前向きな言葉ですよね。

季節によって姿を変える只見町の大自然

バンダイ
その「ねっか」という名前で米焼酎をつくり始めたのは何故なんですか?
脇坂
世界的に蒸留酒にスポットが当たる流れもあって、
福島だからつくれる蒸留酒をつくろうと思ったんです。
ノグチ
でも、この地域だとお米からつくるお酒といえば日本酒ですよね?
脇坂
私も日本酒づくりをしていたんですが、
今の日本では新規の日本酒づくりに免許を交付していないんですよ。
ノグチ
え?そうなんですか??
脇坂
はい。その中で、田んぼを守るにはどうしたらいいか。
酒米づくりは、普通に食べるお米とは時期が少しずれるので、
つくることができれば、米農家の仕事、収入源を増やすことができる。
ただ、酒米というのは使い道が決まっていないと、育ててはいけないんです。
バンダイ
知らなかった!ハードルがいろいろあるんだなぁ。
脇坂
ですからここで自分たちが田んぼ、米を守ろうと思うと、
日本酒以外の酒蔵が必要だったわけです。

子どもたちへ贈る焼酎

ノグチ
日本酒づくりも経験されている脇坂さんが感じる米焼酎の面白いところって何ですか?
脇坂
日本酒は基本的に絞ったら終わりなんですが、
米焼酎は長く寝かせられることと、ブレンドができるところが面白いですね。
バンダイ
長期熟成ということですね。何年くらい寝かせられるんですか?
脇坂
何年でも。今あるものでも樽で20年とか30年寝かせようと思っています。
我々は「お米の缶詰」なんて呼んだりもしますよ。

焼酎が眠る樽。ここで数十年眠り続ける

「雪中貯蔵酒」という雪深い只見町だからこその一品も

ノグチ
そんなに??脇坂さん、もしかしたらご自身では飲めないかもしれませんよ!
脇坂
そうですね、でも子どもたちには資産として残せるわけです。
その子どもたちはまた次の子どもたちに、と続いていく。
ノグチ
スケールがでかい!恋が代々続くって大恋愛ですね。でも、僕は飲みたい!
バンダイ
ノグチくん、樽開けちゃだめだよ。
ノグチ
これは、冷や冷やしながら伺いますけど、、、
子どもたちに焼酎つくりさせてるんですか??(小声)
脇坂
「18歳の酒プロジェクト」と「小学5年生の焼酎づくり」をやっています。
ノグチ
脇坂さん、あっさりと認めましたね。さ、一緒にしかるべきところに。
この国の法律では・・・。
脇坂
飲みませんよ。(笑)飲めないですけど、貯蔵ができますから。
田植え、稲刈りをしてもらって、瓶にラベルを貼り、大人になったら開けてもらうんです。

体験とはいえかなりの作業をしている高校生たち。その分開けるときの楽しみが増すはず!

5年生の田植え。彼らは9年後にきっと、この日の思い出話をするのだろう

ノグチ
・・・脇坂さん、僕も気づいてましたよ。
バンダイ
(ほんとかな・・・。)
脇坂
只見町では通える学校がないこともあり、
高校卒業と同時に町を出る子どもたちが多くいます。
そんな子どもたちに、大人になって再会した時に飲めるお酒をプレゼントしています。
バンダイ
長期で保存できる焼酎だからこそできることですね。
脇坂
5年生は「蒸留」という言葉を習うタイミングでもあるんですよ。
体験してもらった後には、親御さんに対して米焼酎を語るみたいです。(笑)
ノグチ
飲めないのに?
脇坂
飲めないのに。(笑)

未来へ 世界へ

バンダイ
未来の子どもたちを思っての米焼酎ねっかなんですね。
脇坂
それもありますけど、きっかけはもっとシンプルです。
バンダイ
え?
脇坂
自分たちでつくったお酒が飲みたい!
ノグチ
正直!!嘘をつけないタイプ!
脇坂
地酒って何だろうと思った時に、
ここで自分たちがつくったお米で、自分たちがお酒をつくることだと思ったんです。
その地酒を自分たちで飲みたい!というのがあります。
ノグチ
それは楽しい!
脇坂
地域を思うのは自然なことで、飲みたい!が原動力かもしれません。(笑)
ノグチ
いや、そのエネルギーは大事ですよ。
でもしっかり未来の只見町のことも考えているのが脇坂さん、、、ですよね?
ここで言っておかないと、ただのお酒好きになっちゃいますから、ぜひ思いを。
あ、なければ結構です。ただのお酒好きってのもアリです。
脇坂
あります。(笑)
ねっかは、日本一小さな蒸留所として農作業小屋をリノベーションしてスタートしました。
この先、つくるお酒を増やしていって、只見町を出た若者がふるさとで働くという選択肢の一つになれたらいいな、と思っています。

もとは農家さんの作業小屋だったという、ねっかの建物

ノグチ
見えます。30年後、未来の只見町に脇坂さんの銅像が立ってるのが見えます。
脇坂
イタズラされないといいですけど。
ノグチ
大丈夫です。僕が見張ります。でも焼酎で酔ってると思うので守れる保証はありません。
バンダイ
(ノグチくん、30年ものの焼酎開けるつもりだ・・・。)
ノグチ
只見町で生まれたねっかは世界にも進出してるんですよね?
脇坂
蒸留酒は輸送の管理もしやすいメリットがあります。
日本酒はどうしても温度管理などが大変なんですね。
今はロンドンで販売したり、少しずつ販路を広げている最中です。
ノグチ
海外では米焼酎って珍しいんじゃないですか?
脇坂
日本国内でもつくっている蔵は少ないですからね。
海外で説明するときは、香りは日本酒で味はウォッカだよ、と伝えています。
ノグチ
いろんな料理に合いそうですよね。
脇坂
和食はもちろんですが、脂が多い肉料理なんかにも合うと思います。
ノグチ
世界進出となると、これからも忙しそうですね。
脇坂
みんな只見の田んぼ、お米、自然を守りたいんです。
そのために、只見の、ねっかの酒づくりを発展させて世界に攻めます。
ノグチ
でも大変、恋した相手が海外に行っちゃいますよ!
脇坂
仕方ないです。次の恋の相手をつくりますよ。(笑)
ノグチ
探すんじゃなくてつくる!見習います!

脇坂さんのRethink

Rethink Point

「貯蔵ができるお酒」→「子どもが未来に飲むお酒」

「未来視点で見る故郷」

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