DIGEST MOVIE

ノイズミュージックからジャズ、ポップス、映画音楽、そして近年ではNHKの朝ドラ「あまちゃん」や大河ドラマ「いだてん」の音楽でも知られる大友良英さんは、横浜市生まれのミュージシャン。10代を福島市で過ごした大友さんは、震災後に福島市の「わらじまつり」改革に取り組みました。祭りとそこにある音楽をRethinkした大友さんにノグチくんとバンダイさんがお話を伺いました!

改革のきっかけ

ノグチ
なぁバンダイ、このシリーズで俺たちいろんな人に会ってきたよな。
バンダイ
そうだね。
ノグチ
俺はその人たちの考えから何かを学んで変わったんだろうか?
バンダイ
ん、どうしたの?ノグチくん何かあった?身近にいるからよく分からないけど、そんなことを言うこと自体がもう変わっている証拠かもしれないよ。
ノグチ
そうか、少しは変わったのかな。実はな、最近告白されたんだよ。
バンダイ
えええっ?……ついに親子の縁を切る!とかそういうやつだよね?
ノグチ
いや、女の子から。
バンダイ
うわあああっ!おめでとう!これで本当の春が来るね。
ノグチ
それが、断った。
バンダイ
は?
ノグチ
相手が本気だとは思えなくてね。それにもし本気なら、一度断ってもまた来るだろ?とりあえず1週間は待つことにするよ。
バンダイ
ちょっと何余裕出してんの?本気を確かめる??冷静になられたらおしまいかもしれないのに??
……でも、そういう意味では今日お会いする大友良英さんから学ぶことがあるよ、きっと。
ノグチ
え、大友さんって恋の達人なの?
大友
お待たせしました、大友良英です。よろしくお願いします。
ノグチ
よろしくお願いします。あぁ……達人というか、それを超えて悟りを開いた仙人のような柔和な感じ。
大友
はい?

大友仙人現る!

ノグチ
今日は真面目にお聞きしたいことがありまして。
大友
え?真面目な話?その前にラーメンの話がいいな。福島ってどの街でも醤油ラーメンのレベル高いと思うんだよ。もっとこれを打ち出していけばいいと思う。特に昔ながらの醤油ラーメンとかはさ・・・
ノグチ
大友仙人!いっそすべてラーメンの話でいきましょう!
バンダイ
ノグチくんっ!!大友さんは福島市の夏のお祭りである「福島わらじまつり」を2019年に大きくリニューアル、改革したんだよ。
ノグチ
改革??仙人の改革!
大友
確かに私1人では改革できなかったけど、1,000人はさすがに言い過ぎかなぁ。
バンダイ
(ダジャレのように見えて単に話が噛み合ってない言葉のキャッチボールを、今私は見せられています。)
わらじまつりは昔からある福島市の夏祭りなんですよね?それがなぜ改革しようということになったんですか?
大友
いや、わらじまつりは1970年に始まった、比較的新しいお祭りなんです。
ノグチ
そうなんですか!もっと古くからあるものかと思ってました。
大友
福島市の信夫山(しのぶやま)にわらじを奉納するという行事は400年以上続いているんだけど、夏祭りとしての歴史は新しいんです。当時、街の商工会議所が楽しみをつくろうとしたんだろうね。東北6県、他の県には伝統の夏祭りがあるから福島にも、と。

長さ12m、日本一の大わらじを……

福島市の信夫山にある羽黒神社へ毎年2月に奉納する「暁まいり」は400年以上続く伝統行事。

バンダイ
まだお祭りとしては新しいのに、なぜ改革をすることになったんですか?
大友
2011年に震災があって、その後東北6県のお祭りを集めた「六魂祭」というイベントにわらじまつりが出ていったんだけど、そこで考えちゃったんだと思う。
ノグチ
大きな12メートルのわらじを担いでパレードしながら??
大友
わらじ自体は伝統あるものだしそれはいいと思うんだけど、音楽とか踊りとかその見せ方、あり方についてじゃないかな。ねぶたも、花笠も他の県の祭りは見事なものが多いでしょう。それと比べちゃったんだと思うんだ。

2013年「東北六魂祭」、後の「東北絆まつり」に参加した時のわらじまつり。

バンダイ
なるほど「自分たちの祭りはこれでいいのか?」と。そういえば僕が子どもの頃に行ったわらじまつりで、ヒップホップみたいな音楽に合わせて踊っていたのを覚えてます。確かにちょっと他県と比べたら異質かもしれない。
大友
わらじ音頭ね。あの曲は時代ごとに曲調が変わってるんです。サンバとかヒップホップとか。ちょっと「迷走」してたと思う。でもね、それを僕は別に悪いことだとは思わない。だって福島市の人たちは毎年それで楽しんでいたんだから。
バンダイ
福島市という街の中では夏の楽しみとして成立していた。
大友
うん。それが震災後に初めて外に出ていって、注目を浴びて比べられた結果「変えたい!」という気持ちになったんだろうね。実行委員会の人たちから、僕のところに改革の依頼が来たのが2013年です。
ノグチ
あ!朝ドラ「あまちゃん」の年だ!
大友
そう。実行委員会の人たちは最初「あまちゃん人気で盛り上げよう」と思ったんじゃないかな。だから僕は断ったんです。
ノグチ
え?断っちゃったんですか?おい、バンダイ話が終わっちゃった。大友さん、今日はありがとうございました!
バンダイ
終わってないよ!ノグチくん、1週間どころか、秒単位で待てないタイプじゃないか。
大友
実行委員会には「あまちゃん人気で改革しても2,3年しか持たない。本当に福島の祭りとして胸を張れるもの、この先も続くものがつくりたいなら手伝います。でも流行りに乗った改革じゃ意味がないから僕は断ります」と伝えてね。
ノグチ
そこからは?
大友
連絡が来なかったから、あぁもうこの話はなくなったんだなと思ってた。ところがそこから……なんと5年経って連絡が来た。
ノグチ
5年?!
大友
諦めずに数年かけて内部調整したらしく、これは本気なんだなと思った。それでやろうと決めました。
ノグチ
5年……。1週間じゃなく?おいバンダイ、なぜ告白を断る俺を止めなかった!仙人みたいに5年も待つなんて俺には無理だ!
大友
1,000人は大袈裟だけど、100人力くらいには感じたかな。改革は1人じゃ無理だから。
バンダイ
(みなさん、只今2度目のキャッチボール中です。)
大友
実行委員会の人たちには、この役を一緒に背負ってくださいと言った。正直言って嫌な役だもの。この改革は俺が変えたいわけじゃなく、皆さんが変えたいわけで。今まで楽しんでいた人からすれば、改革する俺は当然悪役にもなるわけだしね。
バンダイ
でも覚悟を決めたわけですね?
大友
彼らが本気なら俺も本気で手伝おう、そう思った。

大友流改革はじまる

バンダイ
改革はまず何から始まったんですか?
大友
最初はインタビューしまくった。「この祭りをどうしたいのか?」って。みんなに共通するのは「外に出て恥ずかしくない祭りにしたい」ってことだったんだけど、それって動機としては微妙でしょう?
ノグチ
そうですね。
大友
でもその気持ちは正直なものだと思う。そこをもっと突き詰めていったときに「誇りを持ちたい」ってことなんだなと。福島の祭り、福島という街に誇りを持ちたいんだと。
ノグチ
あぁ、きっとそれは震災後により強く思ったことだと思います。
大友
そのためにどうするか。歴史ある祭りには本当かどうかわからないものも含めて起源となる物語があるんです。だけど、わらじまつりには起源となる物語がなかった。だったら今の時代の人が納得できる物語をつくればいいと思って、数多くある福島の伝説、民話などを調べて物語を完成させた。
バンダイ
まずは芯となる部分をつくったわけですね。
大友
物語があればそれに沿って祭りを発展させていけるから。そしてもう一つ、音楽を生演奏にすること。
ノグチ
古関裕而さん作曲、舟木一夫さんの歌う「わらじ音頭」だ!
大友
実行委員会から、あの曲は残してほしいとお願いされていたんだけど、今までは録音されたテープを流すだけだったんですよ。それを全部生の太鼓、笛、歌に変えようと。その生の太鼓の演奏を他の地域の人が見たときに「これやりたい!」と思えるものができれば、そこで誇りが持てるはずだと思った。
ノグチ
ワクワクします!だけど、演奏するのが大変そう。
大友
太鼓の歴史だって本当のものは途切れているし、今からそれをやろうとしても無理なんです。すでにある祭りにも敵わないし。そうじゃなくて、太鼓も笛も今の人たちが演奏できる形に置き換えて、それでいて真似したくなるようなものをつくろうと思った。
ノグチ
新生わらじ音頭の誕生だ!
大友
とはいえ、まったく新しいものでもダメなので、いろいろ福島のお祭りの音を探した。すると昔あった「福島盆踊り唄」の音源が見つかって、それが太鼓と笛と歌だけで成り立っていたので、そのスタイルと古関メロディを合体させたんです。
ノグチ
おおっ!合体っ!合体っ!
バンダイ
(わっしょいみたいに言って、もうお祭り気分だな)
大友
シンプルな編成で今の人が演奏できるわらじ音頭は、古くも新しくもないものになりました。これしかない!というものができたと思うし、これならこの先100年、200年と続くと思う。

それまで録音に合わせていたものが……

2019年に生まれ変わった!

ノグチ
おおともっ!おおともっ!すみません、大友コールがしたくなってしまい、つい。
大友
あ、その大声で今度歌ってよ。今年の5月くらいに「100人のわらじまつり」という企画で、みなさんからわらじ音頭を歌ってもらった声を送ってもらおうと思ってて。それで壮大な組曲みたいなわらじ音頭をつくるつもりなんだ。ホームページチェックしてね。
ノグチ
はいっ!仙人のためならっ!
大友
いや、100人ね。
バンダイ
(これ、3回目です。)

21世紀型の祭り

バンダイ
数々の祭りを見てきた大友さんが考える「祭り」ってなんでしょうか?
大友
「この街は今までこうだった、これからこうしていきます」と表現する最高の舞台が祭り、なんだと思う。だから今回で言うと、先に「祭りをどうしたいか」が来るんじゃないんだよ。「福島はこれからどうしていくか」それが祭りにならなきゃいけない。
ノグチ
福島のこれから、ですか?
大友
歴史がしっかりある、例えば京都なんかはそのままでもいいと思う。でも福島は震災があって、外とも交わるようになって注目されるときですよ。過去からの連なりとともに、これからどうするかを発信しないと。
ノグチ
大友さんがそれを発信していくということですか?
大友
いや、俺がやっても意味がない。福島の人が自分たちでやらなきゃいけない。なんとなく見栄え良くオシャレしようと思って、衣装さん呼んで借りてきた服を着るみたいになっちゃダメ。あくまで俺はディレクションするだけであって、つくっていくのは福島の人。そうしないとまた迷走することになるから。
バンダイ
福島の人が自分たちで発信することに意味がある。
大友
あとはね、21世紀の今やる改革というのもとても大事なポイントだと思う。今までのわらじまつりは実行委員会にも、わらじを担ぐポスターにも男しかいなかった。
バンダイ
女性がいない??
大友
おかしいよね。女性はもちろん、福島には外国人の方もたくさん住んでいる。21世紀に新しい祭りを発信しようってときに今までのままでいいわけがない。ダイバーシティとか多様性とか一切言わずとも、祭りを通じてそれを伝えていこうと思った。福島には21世紀型の新しいお祭りがありますよって。外国から来てる人が母国に帰った時に「福島にはこんなすごいお祭りがあったんだよ、夏は福島に行こう」って言ってもらえるような。
ノグチ
行きたいっ!実際これをご覧の方でも行ってみようと思う方がいらっしゃると思うので、大友さんから一言お願いします。
大友
福島の人だけでもなく、福島にゆかりがある人だけでもなくぜひ遊びに来てください。きっと外から来た人でも、ここは自分の地元だと思えるようなお祭りを実行委員会の皆さんが用意してくれると思っています。その日ちょっと練習すれば、太鼓を叩いて参加できるようなやり方もこれから生まれると思いますので楽しんでください!

太鼓の演奏は子どもたちでも叩けるように考えられている。

ノグチ
あの……僕の大友コールを録音して送ったら、100人の組曲に使っていただくということは決定でいいですよね?
大友
え?歌じゃないの?ちょっと届いてから考えてもいい?
そうだなぁ、5年考えさせて(笑)。

2019年、福島わらじまつりの様子。

福島わらじまつり オフィシャルサイト https://www.waraji.co.jp

大友さんのRethinkポイント

Rethink Point

視点変えポイント「わらじまつりをどうしたいか」→「福島をどうしたいか」

本質ポイント「祭りは自ら街を伝える舞台」

そのほかの 福島のRethinkな人たち

  • ~福島フェス実行委員 藤原カズヒロさん~

    「福島から東京へ発信する」→「東京に福島をつくって発信する」

    「自分たちだからつくれるものを続ける」

    東京に福島を持ってくる

    震災後、2013年に東京の代々木公園でスタートした「福島フェス」というイベントがある。2014年に会場を港区六本木ヒルズアリーナに移し、現在も続くこのフェスをつくっているのが福島フェス実行委員会。今回は実行委員の藤原カズヒロさんに「なぜ東京で福島のフェスをやるのか?」というお話を伺うノグチくんとバンダイさん。福島という単語がこんなにも登場するのか!というシリーズ最終回。

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  • ~ミュージシャン 大友良英さん~

    視点変えポイント「わらじまつりをどうしたいか」→「福島をどうしたいか」

    本質ポイント「祭りは自ら街を伝える舞台」

    誇りある21世紀の祭りを福島に

    ノイズミュージックからジャズ、ポップス、映画音楽、そして近年ではNHKの朝ドラ「あまちゃん」や大河ドラマ「いだてん」の音楽でも知られる大友良英さんは、横浜市生まれのミュージシャン。10代を福島市で過ごした大友さんは、震災後に福島市の「わらじまつり」改革に取り組みました。祭りとそこにある音楽をRethinkした大友さんにノグチくんとバンダイさんがお話を伺いました!

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  • ~ミュージシャン 渡辺俊美さん~

    「直接の手助け」→「自立の場をつくる」

    「HelpでなくMakeで生まれる未来」

    HelpでなくMakeするステージを

    TOKYO NO.1 SOUL SETや渡辺俊美&THE ZOOT16、猪苗代湖ズでも活躍する渡辺俊美さんは福島県川内村出身のミュージシャン。震災後、現地でのさまざまな活動からふるさとをどう見つめ、どうRethinkしてきたのか。ノグチくんとバンダイさんが俊美さんの思いを伺ってきました。

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