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TOKYO NO.1 SOUL SETや渡辺俊美&THE ZOOT16、猪苗代湖ズでも活躍する渡辺俊美さんは福島県川内村出身のミュージシャン。震災後、現地でのさまざまな活動からふるさとをどう見つめ、どうRethinkしてきたのか。ノグチくんとバンダイさんが俊美さんの思いを伺ってきました。

日常を取り戻すために

ノグチ
なぁバンダイ。俺って奇抜か?
バンダイ
急にきたね。悩んでるの?イエスかノーでいい?
ノグチ
いや、その真ん中くらいの、ちょうどいい感じの伝え方がいい。
バンダイ
(めんどくさいな・・・。)
ノグチ
教えてくれ!この髪型、白衣に蝶ネクタイ!俺は奇抜で世の中から浮いてるのか??
バンダイ
今日お会いする先輩に聞くといいよ。ファッションの面でも何か聞けるかもよ。
渡辺
よろしくお願いします。渡辺俊美です。
ノグチ
おお!俊美さん!

俊美さん登場!このあとの表情とのギャップに注目。

バンダイ
ノグチくん、距離の詰めかたも急だね。
ノグチ
いや、CANDLE JUNEさんのイベント写真にも写っていらしたから、もうお知り合い感覚になっちゃって。隣のお兄さん的な。
渡辺
CANDLE JUNEくんとはこの10年いろいろと一緒にやってきましたね。震災前、彼と一緒にネパールに行ったこともあって、そこで感じたことなんだけど・・・。
バンダイ
俊美さんもまた急ですね。まずは震災に関してのお話から伺いたいです!
渡辺
あ、急だった?あの日はちょうどライブがあって、リハーサルしてたんですよ。で、次の日は引っ越しも予定してたんで、最初状況がよくわからないうちは「引越しどうしようかな」くらいで考えてました。
ノグチ
離れたところにいる人は、最初みんなそうだったと思います。それが徐々に状況がわかってきて?
渡辺
そう。僕は福島県の川内村というところで生まれて、隣の富岡町ってところに家族がいて。最初はまだ連絡がとれて無事は確認してたんだけど、そこから被害の大きさがわかってきて、最初の1週間くらいはちょっと自分でもおかしかったと思う。
ノグチ
地に足がついてないみたいな感じですか?
渡辺
そうだったんだろうね。何をしていいのか定まらず。箭内道彦さんの事務所に集まって話してる映像があるんだけど、自分で見てもちょっとおかしい感じがする。
バンダイ
その箭内さんたちと音楽活動をしたり、福島県内でイベントを開催したり、この10年福島での活動も多かったと思いますが、10年間福島を見てきてどんな変化を感じますか?
渡辺
確かに変わってはきてるんですけど、行くたびに10年前に引き戻されるような感じがあるんですよ。そこで思うのは震災後人々の中にある「恐怖」がどうやったらなくなるんだろうということ。それがなくならないと日常には戻れないと思うんですよ。
ノグチ
恐怖、ですか。
渡辺
恐怖っていうのは感覚だから、物が足りないとかとは違った心の問題で。それを少しでもなくすために歌があるんだと捉えるようになりました。
ノグチ
でも震災直後は歌とか音楽どころじゃなかったりしませんでした?
渡辺
そうですね。だから、歌を求められない場面も多かった。そういう時は「歌いにきたんじゃなく話を聞きにきたんですよ」って。会いに行くという感覚かな。仮設住宅とかでは特にそうでしたね。
バンダイ
歌いに行くのではなく、会いに行く!

福島県内どんな場所でも歌いに行く、いや会いに行く!

渡辺
今でもそういう意識はあります。

(会いに来たよ!)

自分の中の変化

バンダイ
この10年、俊美さんの中でもいろんな変化がありましたか?例えばふるさとの捉え方とか。音楽の捉え方とか。
渡辺
ぜんっぜん違いますね。昔は里帰りとかしなかったもんね。盆も正月も帰らない時期とかありましたから。
ノグチ
若いときにありがちな「田舎を出て東京で勝負するんだ!」みたいな時期ですか?
渡辺
そうそう。とにかく東京に行って目立ってやろうと思ってた。ファッションとかも好きだったけど、目立つために服を選ぶみたいなね。そうやって目立つことで自分にプレッシャーをかけるわけ。周囲の視線を集めたからには何か結果を出さないといけない、と自分を追い込んで。
ノグチ
あの、僕も結構目立つ格好してるみたいなんですが。
渡辺
それいいと思うよ。ノグチくんも視線集めて自分にプレッシャーかけてるわけでしょ?若い人で目立つ格好してる人を見ると、がんばれって思うよ。
ノグチ
(・・・言えない。何も考えずにこの格好してるなんて言えない。)
渡辺
ふるさとへの思いは強くなったし、そこでどんな歌を届けたらいいのかもすごく考えました。少しでも恐怖や不安を取り除けるような曲を作りたいと思ったし。
バンダイ
震災後に作られた『Happy Island』は「福」の「島」で福島の意味ですし、『夜ノ森』や『夜ノ森のカーニバル』とかにも、ふるさとの風景が出てきますよね?
渡辺
そうですね。以前では作れなかった曲かもしれない。でも一方で、今までに作ってきた曲でも福島の人に届くんじゃないか?と考えもしました。TOKYO NO.1 SOUL SETの『SUNDAY』って曲とか、歌っていて僕は勇気が出てくるんですよ。震災前の曲だけど、これを歌うことで取り除ける不安があるんじゃないかと思ったんです。
ノグチ
曲の捉え方にも影響したんですね。他にも変化はありましたか?もっと小さいことでも。
渡辺
10年で?そうだなぁ、酒は弱くなったね。昔は呑んで次の日ライブとかでも平気だったのに(笑)。
ノグチ
弱くなりましたか。
渡辺
うん、あとは涙腺も弱くなった。涙もろくなったねぇ。ほんと昔は泣いたりしなかったのに。

はい、こちら涙腺が弱くなったことが想像できる俊美さん。

ノグチ
大変!どんどん弱くなっちゃう!最近は泣いちゃうんですか?
渡辺
すぐ泣いちゃう。普段もそうだけど、歌って泣いたのは震災後が初めてかな。
バンダイ
歌えなくなっちゃう!
渡辺
だからちょっと考え方を変えて、福島に歌いに行く時は県外の人間として行くという意識を持つようにしたんですよ。そうしないと僕泣いちゃうんで。
ノグチ
福島への思いが強すぎて?
渡辺
そう。一緒に県外から行く仲間もたくさんいたんで、彼らと同じように自分も外から歌いにきた人、と敢えて思うことでステージをやり切れるようにしたんです。

県外からも多く駆けつける仲間たちとのステージ

バンダイ
(なるほど。それも一つのRehinkだなぁ。そうせざるを得なかったということか。)
ノグチ
あれ、もしかして今も涙が?スルスルっ・・・これどうぞ。
渡辺
ありがとう。でもこれハンカチじゃなくてノグチくんの変な蝶ネクタイだよね。そもそも今泣いてないよ。
バンダイ
(あ、しっかりと変って言った!ノグチくんは格好よりも行動が奇抜なんだよなぁ。)

HelpでなくMakeする

バンダイ
そういえば最初にCANDLE JUNEさんのお名前が出てましたけど?
渡辺
震災前に彼とネパールに行ったことがあって。そこで彼が何をするかというと、直接キャンドルとかモノをあげるというより、その作り方とか火の灯し方を伝えるんですよ。だからそれを見た時から「自分たちでできる」ようにしていくこと、そういうきっかけを作ることを考えていて。
バンダイ
それで企画したのがアコワングランプリですか!
渡辺
福島県で開催される「風とロック芋煮会」の中で「ACO ONE GRAND-PRIX」というギター弾き語りの選手権を企画して、2015年から監修してます。今まで県外のミュージシャンが福島にたくさん歌いに来てくれたでしょ?だから、今度は福島から歌を世界に発信できるような場があればいいなと思って。
ノグチ
そこでは弾き語りの先輩として、若い人に何かアドバイスをしたりもするんですか?
渡辺
なんにもしない!
ノグチ
えええっ?!ふるさと思いの優しい俊美さんはどこへ??
渡辺
だって、みんな僕より上手いし(笑)。
バンダイ
でもアドバイス求められますよね?
渡辺
「大丈夫、続けなさい」しか言わない。あくまで「ACO ONE」はきっかけとなる場であって、自分の力で発信できるようになるのがいいと思うんですよ。助けるというより、つくるとか育てるという思いでやってます。Makeするっていうのかな。

「大丈夫、続けなさい」と言っているときの俊美さんはこんな感じ??

バンダイ
そこからたくさんのミュージシャンが注目されるようになりましたね。
渡辺
MANAMIちゃんとか大竹涼華ちゃんとかね。みんな素晴らしいですよ。
ノグチ
そういうミュージシャンがどんどん活躍するようになって?
バンダイ
そのステージを観たら?
ノグチ
優しい俊美さんは?
渡辺
泣いちゃうねぇ、嬉しくて(笑)。
ノグチ
えーっと、スルスルっ、はいこれどうぞ。
渡辺
ありがとう。ほんと変だよねぇ、この蝶ネクタイ。

TOKYO NO.1 SOUL SET オフィシャルサイト https://t1ss.jp

渡辺俊美さんのRethinkポイント

Rethink Point

「直接の手助け」→「自立の場をつくる」

「HelpでなくMakeで生まれる未来」

そのほかの 福島のRethinkな人たち

  • ~福島フェス実行委員 藤原カズヒロさん~

    「福島から東京へ発信する」→「東京に福島をつくって発信する」

    「自分たちだからつくれるものを続ける」

    東京に福島を持ってくる

    震災後、2013年に東京の代々木公園でスタートした「福島フェス」というイベントがある。2014年に会場を港区六本木ヒルズアリーナに移し、現在も続くこのフェスをつくっているのが福島フェス実行委員会。今回は実行委員の藤原カズヒロさんに「なぜ東京で福島のフェスをやるのか?」というお話を伺うノグチくんとバンダイさん。福島という単語がこんなにも登場するのか!というシリーズ最終回。

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  • ~ミュージシャン 大友良英さん~

    「わらじまつりをどうしたいか」→「福島をどうしたいか」

    「祭りは自ら街を伝える舞台」

    誇りある21世紀の祭りを福島に

    ノイズミュージックからジャズ、ポップス、映画音楽、そして近年ではNHKの朝ドラ「あまちゃん」や大河ドラマ「いだてん」の音楽でも知られる大友良英さんは、横浜市生まれのミュージシャン。10代を福島市で過ごした大友さんは、震災後に福島市の「わらじまつり」改革に取り組みました。祭りとそこにある音楽をRethinkした大友さんにノグチくんとバンダイさんがお話を伺いました!

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  • ~ミュージシャン 渡辺俊美さん~

    「直接の手助け」→「自立の場をつくる」

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    HelpでなくMakeするステージを

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